カソード防食によるバイオフィルムの制御

鉄などの金属が錆びる現象は一般によく知られています。鉄を水溶液に浸漬すると,速やかに鉄イオンの溶出反応が生じます。

Fe → Fe2+ + 2e-

鉄の腐食反応とは,鉄が酸化される反応すなわち鉄イオンの溶出反応のことを言います。電気的には,酸化反応(アノード反応)は常に 還元反応(カソード反応)と共役して進行するため,鉄の腐食反応には以下の3種類の還元反応が起こります。

酸素の還元 O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-
水素イオンの還元 2H+ + 2e- → H2
水の還元 2H2O + 2e- → H2 + 2OH-

 それでは,なぜ金属表面にバイオフィルムが形成されると腐食が促進されるのでしょうか。微小電極によりバイオフィルム内の溶存酸素 (DO) 濃度を測定すると,金属表面に好気的な領域と嫌気的な領域が偏在することがわかりました(Fig.1)。

Fig.1  Distribution of oxygen concentration in biofilm on carbon steel

 同一の金属表面に酸素濃度の異なる領域が存在すると「通気差腐食」が進行します。通気差腐食の特徴は鉄の溶出(腐食)が嫌気的領域において 局部的に生じる点にあり,一旦局部腐食が開始されると,その個所はさらに酸素の供給が減少することから腐食が促進され孔食が進みます。従って, バイオフィルムの中で生物活性が高い箇所が選択的に腐食すると考えられます(Fig.2)。

biofilm02.jpg

Fig.2 Differential aeration corrosion in biofil on carbon steel

金属の腐食反応を防止する技術の1つに電気防食法があり,大きくカソード防食法とアノード防食法に分けられます。 カソード防食法は,防食対象の金属に対してその金属よりもイオン化傾向の大きい(イオンになりやすい)金属を電気的に接続し, 防食対象の金属の溶出を保護する流電陽極法と,防食対象の金属に対して別の金属を対極として用意し,防食対象の金属が陰極 になるように外部電源を接続する外部電源法があります。私達の研究室では,外部電源式カソード防食(Fig.3)を行い,バイオフィルム の制御機構を明らかにすることを目的としています。

cathodic protection.jpg(30770 byte)

Fig.3 Cathodic protection on carbon steel




|戻る|